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口コミの評判により、販売が決定!

幼児ドリルを開発することになったいきさつは?

赤石:はじめは、書店に並ぶドリルではなくて、公文式教室で使うためのドリルとして開発されました。当時、教室では算数1教科のみの学習でしたが、学習者の中で学年のレベルをはるかに超えている生徒たちの生育歴を保護者の方にお聞きしてみると、ほとんどの子どもたちが幼児期からの「うた」や「読み聞かせ」を通して、高い読書力を持っていることがわかりました。

 そのような事実を背景として、教室においても、算数・数学を学習するとともに、ひらがなを読んだり書いたりする力を高める方法はないか、また、算数・数学学習の基礎となる「数を数える力(数唱力)」や、「線を書く力(運筆力)」ももっと養うことができないか、という声が次第に高まってきました。

 そこで、教室での幼児や小学低学年の子どもたちの基礎力養成を目的として、ひらがなや、線を書く練習のドリルが開発されたのです。このドリルは、公文式教室に通っていないご家庭にも少しずつ口コミで広がり、地域の書店さんでも販売して欲しいということになりました。そして、公文式創始者でもある故公文公会長により、くもん出版の前身である公文教育研究センターに、一般の子どもたちにもこのドリルを広めていく使命が下りました。

子どもを「見る」ことがはじまり

幼児ドリルの開発に携わってきた中で、印象に残ったエピソードは?

赤石:私が、編集者として幼児ドリルを担当することになった時は、『ひらがなおけいこ』『さんすうパズル』など、すでに何点かのドリルは先輩たちの力で制作されており、それらに続くものを開発することになりました。私が悩んだのは‘何を’ドリルにするか、でした。なかなか企画を考えつけないでいるとき、公文会長から「教材は頭で作ってはだめだ。子どもたちが何を求めているか、子どもたちから学びなさい」という言葉をもらいました。それ以来、暇な時間を見つけては、公文式の教室や近くの幼稚園に行き、ぼうっと子どもたちの行動を見ていました。

 手先の運動能力を高めることを目的としている「きりえあそび」は、その中から生まれたものです。ある保育ルームに行ったときです。一人の子どもが、はさみを持って切りたそうにしていた。でも、切るものがない。その子がはさみを片手に、先生に「何か、切るものはないですか」と聞くと、先生は教室の隅を指差し「そこに新聞のちらしがあるでしょ」と一言。その子はちらっと目をやると、はさみを置いて、他の遊びをはじめてしまった。その一部始終を見ていてひらめきました。それならば、子どもがはさみで切りたくなるようなドリルを作ろうと。

 ある有識者にはさみを使う効果を確認するために、このドリル制作のご相談をしたところ、「確かに手先の運動能力向上に役立つとは思うが、切るだけのドリルなんて、もったいなさすぎる。チラシを与えれば済むことではないか」と反対されました。しかし、何か割り切れない気持ちを会長に伝えたところ、「ひとりでも、切りたがっている子どもがいるのなら、われわれは作るべきではないか」という励ましをもらいました。そして、10年以上も子どもたちに愛され続けている「きりえおけいこ」が生まれたのです。

公文公会長は、どんなふうに幼児ドリルの開発に関わっていたのですか?

赤石:当時はまだ会社も大きくなく、会長の公文公から直接、意見やアドバイスをもらうこともできました。公文式のドリルは制作の過程で、教室の生徒さんたちに実際に遊んでもらい、保護者や指導者の先生方にヒアリングをしながら「果たして子どもたちに受け入れてもらうことができるだろうか」ということを確かめるための検証を重ねていきます。その検証の経過を会長に伝える時は、叱られることが多かったですね。やはり担当者としては企画を実現したいばかりに、つい身びいきな報告をしてしまうことがあります。思わず「たくさんの子どもたちが喜んでいました」などと言おうものなら、「たくさんとは、何人のことですか。何歳の子がどのように喜んでいたのですか」と、細かい指摘が入ります。逆に、例えたった一人の子どもでも、楽しんで学習に取り組んでいた事実を担当者が自信をもって伝えることができれば、公文会長は了解してくれました。

 全てを子どもの視点に立って判断する、それが、今もドリル制作の根幹をなしている、公文式の「子どもから学ぶ」という思想なのです。

これまでの歴史をふりかえって、利用者の皆さんへ一言お願いします。

赤石:現在の幼児ドリルは全62点です。発売当初から現在までの30年以上の間には、絶版になってしまったものも数多くあります。また、現在のドリルも何度も改良を加えて、当初の原型をとどめていないものがほとんどです。振り返ってみますと、無くなってしまったものは、子どもの視点に立ったつもりで、実は編集者の頭の中だけで考えたものだったのでしょう。そのときは正しいと思っても、さらに検証を重ねてみると、改良しなければならない箇所に気づくことも少なくありません。その意味では、今残っているものは自信を持って、「子どもたちから学んだ」その結晶、つまりは本物に近いものだと言えます。

 また、二世代で幼児ドリルに取り組んでいるご家庭もあるということも知り、「幼児ドリル」という言葉さえない時代から、ゆっくりと長い月日の中で、公文式ドリルが受け入れられてきたのだと実感します。先ほど「本物に近い」と言いましたが、まだまだ改良すべき点もあるかと思います。今後も子どもたちに学びながら、「もっともっと本物に近い」幼児ドリルを目指していきたいと考えています。

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